このページでは、共感覚の科学的で詳しい説明を行っています。
簡単な解説をご覧になりたい方は、『共感覚とは』
もご覧になってください。
共感覚の特徴
シトーウィックによる共感覚の5つの特徴
ハリソンによる共感覚の4つの分類定義
共感覚の発生原因
共感覚の発生頻度 ←今はここ
共感覚と遺伝との関連
共感覚の個人間の相違
共感覚者の脳活動計測
参考文献
共感覚の発生頻度
共感覚の発生頻度にはいくつかの説がある。25000人に1人、100000人に1人、25000人に1人、2000人に1人、数百人に1人等である。 これらの数値は、共感覚の定義の違いや、調査方法の違いに大きく影響を受けていると思われるため、一概に比較することは難しい。
バロン=コーエンと学生のグループは、「ケンブリッジ・イブニング・ニュース紙(CEN)」と、ケンブリッジ大学学生新聞 「ヴァーシティ」の紙面上に、共感覚者からの連絡を促す広告を出稿することにより、その時点での最小の存在率を明らかにしようとした[4]。
その調査によると、CENの購読者数約44000人から、28名が共感覚を持っていると連絡し、その内22名に共感覚を確認している。
18名は色と単語の共感覚で、4名は音楽に色がついている共感覚であった。これをもとに計算すると、比率はほぼ1対2000である。
このサンプルでは、6.3対1で女性が多く、7名(33%)が家族にも共感覚者がいると答えた。
一方、ヴァーシティの購読者数は約11000であり、4名が共感覚を持っていると連絡し、4名全員に共感覚を確認している。
この場合には、1対2500となっており、CENでの調査結果と近い数字がでている。3対1で女性が多く、1名は家族にも共感覚者がいると答えている。
この調査から、2000人に1人という発生確率はある程度信頼がおけると言える。ただ、共感覚の定義は様々であり、 この調査における共感覚の定義は明らかになってはいないため、この数値が絶対であるとは断定できない。
大学の研究で行ったアンケート調査
ここからは、私個人が大学の研究で行ったアンケート調査について述べています。
音楽的・芸術的な素養のある人物を対象に、共感覚を感じたことがあるかどうかの簡易的なアンケート調査を行った。
「音楽的・芸術的な素養のある人物」とは、楽器を演奏した経験や、声楽に関わったことが数年以上あり、現在まで続けている人物を指す。
共感覚があるかどうかの判定には、シトーウィックによる共感覚の5つの特徴[1]を元に、
1. 共感覚による知覚が具体的な記憶と結びついていない
2. 共感覚による知覚が複雑なもの(風景や詩的な比喩表現)ではない
という基準を用いた。
今回のアンケート調査によると、アンケート総数416人の中で、何らかの共感覚があると判断された人は180人であった。
中学・高校での部活や、大学でのサークル活動による音楽経験者に限ると、243人中、88人(36%)に何らかの共感覚があると判断され、
相対的に楽器の習熟度が高いと判断されたグループに限ると173人中、92人(52%)に対して共感覚があると判断された。どちらのグループも、
従来の見解である2000人に1人(0.05%)とは大きな開きがあり、特に、相対的に習熟度の高いグループは、
ほぼ2人に1人が何らかの共感覚があると判断された。この数字は、これまでの研究では見られなかった結果である。
共感覚者であると判断された人の割合が従来の研究に比べてとても多い理由は、共感覚者であるかどうかを厳密に判断しておらず、
共感覚的比喩も多く含まれると考えられるためだと考えられる。しかし、音楽経験者に限ると、無作為に選んだ集団と比べて
数多くの共感覚者が見つかるという結果は、共感覚は後天的な要素と何らかの関係があるという可能性を示唆しているのかもしれない。